地蔵院聖教調査

一九九七年一一月一五日より一八日まで萩原寺(香川県三豊郡大野原町萩原、秋山行徳住職)に出張し、同寺所蔵「地蔵院聖教」の調査を行ない調書を作成した。本調査は四国史料調査の一環であり、一九八八年から継続している。萩原寺には、多数の中世・近世文書のほかに、膨大な量の平安時代から室町時代の真言宗聖教が残されている。これらの大部分は、三宝院流から派生した六方大事を相伝した萩原寺中興真恵(宝徳元年〈一四四九〉寂)とその弟子数代の時代に伝授・蒐集されたものである。現在四十六函の聖教を確認している。本年度は、十一函(未了)・二十函(了)・二十二函(了)・二十四函(了)・二十五函(未了)・二十六函(未了)・二十七函(未了)・二十八函(未了)・二十九函(未了)・三十函(未了)・三十一函(未了)を調査した。調査済点数は約三千点に達している。聖教の時代別内訳としては、平安時代五点、鎌倉・南北朝時代約三四〇点、室町時代約二〇〇〇点となっている。この聖教を収める函には室町時代のものも数点あるが、腐朽したものも多くあるので、寺が新調された桐函に、一〜十三・十五・十七〜十九函は移し替え、旧聖教函は別途保管することにした。
 なお、調書正本は古代史料部門研究室に保管している。また、地蔵院聖教データベース(PC版)を作成している。地蔵院聖教については、一九九五年まで本調査に参加された故松原秀明氏が『琴平町史』にその一部を紹介、検討されている。前年度に引き続き、中村順昭氏(日本大学文理学部)・渋谷啓一氏(香川県教育委員会歴史博物館準備室)・丸山裕美子氏(本所非常勤講師)・三谷芳幸氏(東京大学大学院)に調査に参加していただいた。貴重な聖教の調査を許可された萩原寺住職秋山行徳氏に謝意を表する。
             (石上英一・厚谷和雄・榎原雅治・山口英男・末柄 豊)

『東京大学史料編纂所報』第33号